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KAKECOMI代表からみなさまへのメッセージ

KAKECOMIはじまりの物語

はじめまして。KAKECOMI代表の鴻巣麻里香(こうのすまりか)です。

ソーシャルワーカーとして地域に暮らす『生きづらさ(病、貧困、トラウマ等)』を抱えた人々の支援に携わっています。精神科医療機関で約10年勤務し、東日本大震災後は福島で被災された方・避難された方のメンタルケアに従事してきました。

 

KAKECOMIを思いついたのは、数年前のことです。
ある女性との出会いがきっかけでした。彼女は自宅で理不尽な仕打ちを受けていました。
多くの人は彼女に「そんな家から出ちゃいなよ」と言います。ですが、思いやりからの言葉でも、彼女には軽々しい他人事のように聴こえました。家から出る。それは子どもがいる彼女にとって、とても覚悟のいることであり、彼女が築いてきた多くを失うことだったのです。
その彼女は言いました。
 
「ほんの数時間でも、家から離れて、安心してゆっくりできる、そんな場所があったら。そこでリセットして、そうやってきっと生きていけるのに」と。
 
彼女は家にいられなくなると、子どもを助手席に乗せた車を走らせ、深夜営業しているお店の駐車場で一夜を過ごしていました。
 
見渡してみれば、そのような人が私の周囲にたくさんいました。
家に、学校に、職場にいられない。そんな時、ファストフード店やカラオケ店、コンビニで過ごす。そこでは安全が脅かされ、貧しい食生活が常態化していました。それでも、そういった場所にでも逃げられる人はまだ良いと言えるかもしれません。逃げる力と意欲を削がれた人、そして多くの子どもは、辛い環境に甘んじるしかないのですから。

「安全」であり「閉ざされていない」場所の必要性

傷ついた人が「逃げ込める」場所(シェルター等の施設や医療機関)はあります。ですが、少なからずの「傷ついた人」は、そういった場所を利用しようとしません。一度そういった施設に入ったらもう社会に戻っていけないのではないか...今まで積み重ねてきたものが全て崩れてしまうのではないか...これからずっと隠れて暮らすことになるのではないか...それが「逃げる」ことを戸惑う人から聞かれる言葉です。たしかに、身体や心が深刻なダメージを受けてすぐにでも安全を守らなければならない時は、そういった施設が必要です。ですが、日常の中に当たり前に「辛い時に居られる場所」があったら、もしかしたら心身が深刻なダメージを負う前に自分を守るための対処ができる、その力をチャージできるようになるかもしれないと、私は考えています。

 

ちょっとの間だけでも駆け込める。
だけれど、決して閉ざされているわけではない。
人や社会とのつながりが維持されていて、力をチャージしたらいつでもそのつながりの中に戻っていける。
そんな場所を作りたいと、ずっと願っていました。

 

そして、KAKECOMIとして実現することにしました。

安全なかけこみ寺であり、コミュニティとつながっている場所。
 
KAKECOMI(カケコミ)=かけこみ寺+コミュニティ
 
震災が浅からぬ傷を残した福島県南の白河市に、小さく始め、大きく育てていきます。

​まずは「こども」から

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鴻巣麻里香(こうのすまりか)

KAKE COMI発起人・代表

精神保健福祉士

福島県スクールソーシャルワーカー

 

1979年生。こども時代母親が外国籍であることを理由にいじめにあい、自分の価値や生きる目的が見いだせないままなんとなく大学院まで進学する。一橋大学大学院社会学研究科在籍中に北関東の山あいにある精神科病院関連施設でボランティアに従事。その経験を機に多様性と弱さを受け入れる地域社会づくりを目指し、精神科医療機関等で約10年に亘り地域に暮らす心の病・悩みを抱えた人の心と生活のサポートを行っている。東日本大震災後は『ふくしま心のケアセンター』に在籍し被災者・避難者の心のケアを行う他、自治体や公共機関で市民を対象とした 心の相談を実施。セルフケアやメンタルヘルス、コミュニティケア等のワークショップや講演を多数行う2014年12月に脳腫瘍除去の大手術を行い、完治を機に離職。より地域に根ざした活動を志し、フリーランスのソーシャルワーカーとなりKAKECOMIを立ち上げる。現在は誰も孤立しないための居場所づくり(たべまな)の他、スクールソーシャルワーカーとして貧困や虐待、いじめなどに苦しむこどもと家族の支援を行なっている。2019年9月ミネルヴァ書房より『ソーシャルアクション!あなたが社会を変えよう』刊行(共編著)。

講演・発表実績:日本アルコール関連問題学会、日本家族療法学会、自殺対策ゲートキーパー養成講座、教職員向け研修、学校等のPTA研修、医療機関職員向け研修、中日新聞懇話会、ライオンズクラブ・ロータリークラブ、中日新聞懇話会、中京テレビ等。

執筆実績:季刊Be!、こころの科学、世界、福島民報等。

料理の腕前には定評のあるアマチュア・シェフ。

KAKECOMIが取り組む最初のプロジェクトは「こどもの居場所」づくりです。

​なぜ、こどもか。経済力がなく情報を得る力も弱く、そして移動手段の選択肢が少ないこどもは、心理的にも物理的にも「辛さ」から遠ざかることが、大人よりずっと困難です。

私はこどもの頃、学校でいじめに遭っていました。母親が外国人であり、容姿が異なっていて「目立っていた」ことが主な要因です。「ガイジン」「バイキン」というのが、私が小学生の頃に最もたくさん呼びかけられた言葉でした。

​私は、自分がいじめられていることを、両親に言うことができませんでした。母の出自のせいでいじめられていたことを両親が知れば、悲しむと思ったからです。学校では排除され攻撃され居場所がなく、家では秘密を抱えて居場所がありませんでした。加えて、家は経済的に豊かではなく(むしろ貧しく)、そのために惨めな気持ちになることがたくさんありました。新しいジャージが必要になったのに両親に言い出すことができなかったり、修学旅行にお小遣いを持って行けなかったり、やりたいことやほしいものをたくさん諦めたり。いじめ、貧しさ、そして両親の不仲。そういったこども期の体験は、おとなになってからの私の価値観や行動に大きく影響しました。自分なんて価値がない、何をやってもうまくいかない、自分は誰にも愛されない...自分自身に振り回される自分、その根っこがこども期の体験にあったことに気づくまでに時間がかかり、そしてそこから(ある程度)抜け出すまでにはさらに時間がかかりました。その間、周囲も自分自身もたくさん傷つけてきました。

 

今、かつての私と同じような困難と孤立の中にあるこどもたちが、おとなになった時に「今」の体験の呪縛を受けないために、何が必要だろう。もし、今目の前にこどもの時の私がいたら、私はその子に何をしてあげられるだろう。

 

​そう自分に問いかけた答えが、「学校でも家でもない、ただ安全に過ごせる場所をつくる」でした。それが「まかないこども食堂たべまな」です。

誰もが当事者になり得る「孤立」

孤立。それは誰にとっても他人事ではありません。
誰でも、歯車がちょっと狂ってしまえば、コミュニティとのつながりが奪われて、誰かや自分を傷つけることになってしまうかもしれません。様々な生きづらさを抱えた人々との出会いの中で私が痛切に感じたこと、それが「誰もが当事者になり得る」ということでした。

私は2014年の終わりに脳腫瘍の大きな手術をしました。大変な手術を乗り越えることができたのは、たくさんの方の支えがあってのことです。

もし後遺症が残ったら、障がいが残ったら、身体が動かなくなったり、ちゃんと考えることができなくなったり、手術前と違う心になってしまったら、今できることができなくなってしまったら、私はどう生きていったらいいんだろう。生きていけるだろうか。生きていっていいんだろうか。誰からも必要とされなくなるのではないか。多くの傷ついた人、障がいを背負った人を「支援」する仕事をしていながら、手術の前に私が感じたのは困難を抱えていくことへの恐怖、そして孤立することへの恐怖でした。 

私がその恐怖を抱えながらも手術に臨み、生きて帰ってくることができたのは、周囲の人たちとのつながりがあってのことです。生まれてから今まで、私はたくさん失敗をしてきました。たくさん誰かを傷つけました。過ちをおかしました。間違いをおかしました。そんな不完全な私とでも、つながり続けてくれる人がたくさんいました。そのつながりに支えられて生きて帰ってきた私がすべきことは、まだその「つながり」がない人とつながり、困難に直面した時の「ひとりじゃない、帰ってこられる場所がある、きっと大丈夫」という気持ちを届けることだと確信しました。


生きづらさの先の孤立をリアリティをもって想像する機会を、手術という体験は私に与えてくれました。

 

生きづらさの先の、孤立。そんな状態に陥りそうになった時に、駆け込める場所。それがKAKE COMIです。

 

もしかしたら、みなさまがお住まいの地域にもKAKECOMIを必要としている人たちがいるかもしれません。

たくさんの人を救う国の大きな制度が出来るのを待つのではなく、「ひとり」が「ひとり」と繋がるコミュニティの仕組みとなる小さな場所を、各地域にできるだけたくさん作るために、みなさま、どうか、ご参加ください。

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